株式会社カプセルの野田 真代氏と弊社代表の山川による合同オンラインセミナー「住宅会社が今やるべき売上増加セミナー」を、住宅業界の企業様向けに開催しました。レポート第一弾の「住宅会社が今やるべきSNS戦略」に続き、第二弾は山川による「顧客の心に響く間取りづくりのヒント」です。本セミナーでは、お施主様向けの間取り作成サービス「madree」の間取りを基に解説します。建築家が作成した約6,000枚の間取りデータをストックしており、インスタグラムのフォロワー数は17.2万人。madreeが所有する間取りを住宅会社様にもご活用いただけるよう、昨年から間取り検索サービス「madreeデータバンク」をスタートさせました。本記事は、間取りのトレンドを知り、顧客に響く間取りや売上アップにつながるヒアリング方法・提案を解説します。登壇者紹介:山川 紋/スタジオアンビルト株式会社 取締役1981年名古屋市生まれ。株式会社リクルートにてWebマーケ、商品開発を担当する。2011年横浜市で建設設計事務所の設立・運営。住宅設計、リノベーションのデザインを行う。2017年スタジオアンビルト株式会社 取締役就任。間取りが売上を左右する?顧客とのギャップとは山川:弊社のサービスに間取りを挙げている理由として、お施主様は間取りに対する不満があることを知ったからです。実際、インスタグラムで実施したアンケートによると上記のようなお声が寄せられ、間取りの満足度が低いことが分かりました。また、日経ホームビルダーの調べによると、住宅購入者の95%が間取りに不満を抱えているという調査結果もあります。さらに、2022年の住団連の実態調査では「住宅購入で重視する点」の第1位は「間取り」であり、61.8%を占めているんです。お施主様の声とデータを見ると多くの方が間取りに関する悩みを抱えていて、住宅選びの重要な要素であるのが分かると思います。山川:また、弊社のインスタグラム調べによると、住宅購入者の86%が「3つ以上の間取りプランを比較検討したい」と考えています。とはいえ、住宅会社にとって契約前に3つ以上の間取りを提案するのは容易ではないですよね。間取りの提案に制限があったり、間取り作成時間の確保が難しかったりなどの課題もあると思います。つまり、間取りに関してはお客様と住宅会社の間にギャップが生じているのが現状なんです。その結果、3社に1社は間取りが原因で失注しているというデータもあります。せっかく集客に成功しても、間取り提案で顧客を逃してしまう背景がある。だからこそ重要なのは、「顧客のライフスタイルに合った間取り」です。以下では、madreeで人気の間取りからトレンドを知ってもらい、間取りで失注を防ぐ工夫として参考にしていただけたら幸いです。顧客の心に響く間取りづくりのヒント山川:まずは、madoreeのインスタグラムの中から「2023年Instagram「いいね」数トップ5の間取り」に共通している要素をご紹介します。ウォークスルー/裏動線リビングの和室ランドリールーム(サンルーム)山川:ウォークスルー・裏動線とは、キッチンや収納スペースを経由する動線です。玄関からの動線が2つあることで来客時に生活感を隠せて、すっきりした印象を与えられます。洗面脱衣所や浴室は来客から見えないように配置し、ホールからLDKに直接入る動線を別に設ければ、来客目線を配慮した間取りになります。(上画像 赤枠部参照)一般的に、動線を別で設けるにはある程度の面積が必要です。しかし、廊下をなくして各部屋に直接アプローチできるウォークスルーにすれば、面積を節約できます。来客から見えない裏動線とウォークスルーで廊下をなくす間取りは、madreeでも人気です。山川:リビング横の和室は、小さなお子様のいるファミリー層に支持されています。リビングで家族団らんをしながら、和室で子供を遊ばせたりお昼寝させたりできるのが魅力。3畳程度あれば来客時には客間としても活用できるため、マルチな空間として人気ですね。山川:ランドリールームが人気の理由は、室内干しの需要や、乾太くん(リンナイ ガス衣類乾燥機)を使いたい要望が増えているからです。この希望を反映させるには、洗面と脱衣所を離すのがポイント。(上画像 真ん中・右を参照)「洗う」「干す」「畳む」作業の時短につながるため好評です。また、コロナ禍以降は、玄関先に洗面を別で設ける間取りも増えてきています。(上画像 左を参照)一方、ランドリールームを設けるのが難しい場合は、初期の段階でホスクリーンの位置を提案するのがおすすめです。いつでもどこにでも設置できるとはいえ、室内干しの提案が初期であれば顧客から喜ばれると思います。これらの3つの要素をふまえた上で、「2023年インスタグラム「いいね」数トップ3の間取り」をご紹介しましょう。3位:来客から隠して生活感をなくすウォークスルー裏動線の間取り山川:第3位は、ウォークスルー・裏動線とリビング横の和室、ランドリールームを備えた間取りです。特徴は、大きく3つの回遊動線がある点ですね。1つ目は、玄関から2つに分かれる動線(上画像① ホールを通ってLDKに行く動線 上画像② シューズインクローゼットからパントリーを抜けてキッチンにつながる動線)。2つ目は、ファミリークローゼットからランドリールームを抜けて外干しと室内干しができる動線(上画像③)です。2階はコの字型であり、バルコ二ーを挟んで回遊できる間取りです。広さにゆとりがあって無駄のない設計になっています。2位:キッチン後ろの裏動線が便利!将来は1階で暮らせるほぼ平屋山川:第2位は、キッチン裏に水回りが一直線に配置されたウォークスルーの裏動線が特徴です。来客は気兼ねなくトイレと洗面が使える仕様であり、生活感を感じさせない工夫が施されています。少し広めの玄関には土間収納があり、来客は寝室前を通らずLDKに入れます。現実的な広さですが3畳の和室を設けており、ファミリー層に好評の間取りです。1位:花粉も天気も気にしない!サンルームと室内遊具のある家山川:第1位は、ウォークスルー裏動線・リビング横の和室・ランドリールームなどの人気の要素をすべて詰め込んだ贅沢な間取りです。玄関から回遊できる動線があり、リビングに隣接した和室はキッチンからも見渡せる位置に配置。家事の時短を叶えるために外干しと室内干しにも対応できる動線であり、近くにファミリークローゼットも設けています。このように3つの要素をすべて盛り込むのが難しい場合もあると思います。しかし、ライフスタイルに合わせて必要な要素を取り入れれば、顧客に響く間取りにつながりますよ。他社と差をつける!間取り提案やヒアリング手法&提案術山川:madreeのヒアリングはサイトのフォームに沿って選択式で回答してもらい、必要に応じて備考欄も入力してもらう手法です。主なヒアリング内容は、以下3点です。暮らす人はどんな人なのか(=趣味やライフスタイル)どんな暮らしがしたいか希望するLDKの大きさは聞かないこちらは、実際にお客さまから回答していただいた結果山川:まずは、お客様の暮らし方を詳しく聞き取ります。家族構成はもちろん、食事のスタイルや家事などが含まれます。これらを聞くことで、お客様のオリジナルの間取りが作成できるんです。例えば、食事や料理に関してヒアリングすれば、カウンターテーブルの有無を考えられます。また、筋トレが趣味なら2畳ほどのトレーニングスペースを作れば喜ばれると思うんです。LDKに関しては、具体的な広さを聞かない代わりに部屋の使い方やイメージを重視しています。ヒアリングを通して分析した結果、最近の要望の傾向は、以下の3点です。顧客が要望する傾向は、ライフスタイルにあり!山川:リビングの過ごし方で最近多いのは、「それぞれがテレビ・趣味・読書・勉強などをしている」です。これらを間取りに反映させるなら、全員が座れるソファだけではなく、趣味のスペースや読書コーナーなどをイメージして設計するのがよいと思います。 家事の場合、約8割は「室内干しのみ・室内干しメイン」です。つまり、人気の要素である ランドリールームや室内干しの提案は必須だと考えます。また、近年増えてきたリモートワークに対応できる間取りであるかも重要ですね。「何人がリモートワークであるか」「週何回か」によって間取りの提案は異なるため、しっかりヒアリングすべきだと思います。選ばれる間取りの提案方法山川:間取りで競合と差をつけるには、提案方法を工夫することが大切です。心がけたいのは、要望を概ね満たしている間取りを提案することです。先ほどご紹介した3つの要素は、お客様から支持されています。これらを上手に取り入れつつ、オリジナルのニーズにも応えた間取りを目指してください。山川:加えて、分かりやすい図面を用いることも重要です。間取り図に家具や人物のイラストを添えたり、暮らしのシーンが想像できるパースを用意したりなど、提案資料の見せ方にも気を配るとよいと思います。お客様が間取りをイメージしやすいよう、視覚的な工夫を凝らすのがベストです。また、自分だけのためにプランニングしたのだと感じてもらう提案は、顧客の心をつかむと思います。そのためには、間取りの細部にお客様のニーズを反映させて、オーダーメイド感を演出することです。例えば、お客さまに合う収納棚を設ける、趣味を楽しめるような間取りにするなど。「新しい気づきを得てもらう」工夫があり、ライフスタイルに寄り添った共感を得られる間取りを提案すれば受注につながると思います。madreeのサービスを味方につけて間取り提案を変える山川:お客さまが住宅購入時に最も重視するのは間取りであり、提案時には3案ほど希望されている傾向です。しかし、住宅企業様にとっては間取り作成に関する課題もあるかと思います。そこで弊社では、間取りの作成や提案時に検索して活用できるサービス「madreeデータバンク」をスタートさせ、閲覧できる間取りは4,000枚以上を用意しています。延床面積・間口・奥行き・暮らしの条件などを検索し、お客さまのニーズに合わせて最適な間取りを探し出せる仕様です山川:データバンクの間取りは、自社のPRにも活かせます。実際、ご活用いただいている住宅会社様からは、「打ち合わせの時間が短縮できた」「1人のお客さまにしっかり接客できて集客につながった」など、嬉しい声が寄せられています。山川:また、弊社では多くの建築士さんにご登録いただいており、建築士に、設計プラン・図面作成・CGパースを作成してもらえる「設計支援のサービス」もございます。普段の接客ではデータバンクを活用し、オリジナルの間取りが欲しいお客様やリフォームの場合は設計支援を活用するなど、使い分けも可能です。山川:さらに、土地の形状に合わせて間取りを提案できる「土地形状検索機能」もベータ版をリリースしています。山川:土地探し中のお客様に対して間取りを作成するのは困難であり、提案しにくいこともあると思います。しかし、土地のイメージから派生した間取りを基に提案できれば、資金計画や建物と土地の費用バランスなどを判断でき、その後スムーズに進められると考えます。他社と差をつけるためには、間取り提案の工夫が欠かせません。社内の設計リソースが限られている場合でも、データバンクを味方につければ質の高い提案が可能です。ぜひご検討いただき、お役に立てれば幸いです。