本記事では、2月26日に開催された「プロのための “最新間取り提案術” ALTA×madreeで実践する最新DXメソッド」の内容をレポート形式でご紹介します。セミナーでは、最新の住宅間取り提案・営業アプローチ手法に加え、ALTAとmadreeデータバンクの連携活用法について解説。DXツールをどのように商談成果へつなげるか、具体的な実践ポイントが共有されました。本記事では、当日の内容を振り返りながら、現場で活用できるポイントを整理してお届けします。SCALE建築設計事務所設計事務所が実践する「間取り提案の考え方」第一部では、SCALE建築設計事務所代表の藤岡氏より、設計事務所として数多くの住宅設計を手掛けてきた経験をもとに、顧客の心をつかむ間取り提案の考え方や組み立て方について解説いただきました。藤岡 佑介/SCALE建築設計事務所 代表1987年名古屋市生まれ。2011年〜2015年(株)シーラカンスアンドアソシエイツにて、小学校・学童保育所・住宅等の設計管理業務に従事。2015年〜2021年中日設計(株)にて設計管理に従事しクリニックの設計管理業務を担当。2021年に独立起業。◯帖◯LDKといった条件を避け、設計の”幅”を広げるように藤岡:私が初回ヒアリングで重視していることは、設計の「幅」をもたせた聞き方をすることです。また予算、家族構成、車の台数など基本的な内容を聞くのはもちろんですが、雑談を通してお互いの人柄や信頼関係を築くことが重要だと考えています。企業によっては、「部屋の広さはどれぐらい欲しいか」「キッチンとダイニングは横並びがいいか」など、初回に聞く場合もあると思います。もちろん、最終的にこのような要望もお施主様に多々あるのは事実です。しかし、この段階では間取りや建物の規模感が定まっていないため、私は具体的な広さや要望は尋ねません。初回ヒアリングでは、形に直結する内容は一旦据え置いています。藤岡:そのあと私は、「ファーストプラン」と「セカンドプラン」の2段階に分けて間取りを提案しています。ファーストプランを提示して、出てきたお施主様の意見が非常に重要だと考えているんです。その意見や要素を反映させてセカンドプランとして落とし込み、質のいい間取りに仕上げる手法です。そのためには、ファーストプランは質<量。セカンドプランは量<質と考えています。ファーストプランでは、ヒアリングで聞いた大まかな情報を基に3〜5案の間取りを作成します。複数のバリエーションを提案する理由は、お施主様に要望を伺っても意見が出なかったり、現実離れした要望が出たりするからです。複数提示すれば間取りや要素に対して「イエス」か「ノー」で答えてもらえる。案が何もない状態では間取りは作れません。ですので、初回ヒアリングでは具体的な広さではなく雑談を重視しながらファーストプランで要素を提示しているんです。また、ファーストプランを提示した上でのヒアリングで重要なのは2点です。1.「複数提示した案のどの部分がよくて、どの部分が好ましくないか」を聞くこと。ファーストプランでこれらの要素を抽出すれば、一層お施主様が満足する間取りを作れます。「どの案がいいですか?」ではなく「どの部分が気に入りましたか?」と聞けば、「個室は最低限でいい」「畳スペースは広めに欲しい」「広さが厳しいけど、書斎コーナーは必ず欲しい」など具体的な要望が出てくるはずです。2.敷地の特徴・予算内でできる範囲・間取りを実現する上での問題意識をお客様と共有することが理想です。共有できれば、建物を買う立場と売る立場という関係性から一緒に建物を考えるチームワークが生まれ、お客様との信頼関係性を作れます。実際、リノベーションや限られた敷地内で間取りを落とし込む場合、意外に思い描いていた広さが取れないこともあります。これはお施主様にとって、理想と現実がリンクする瞬間。しかし、それを正直に伝えて問題意識をお客様と共有できれば、間取りの優先順位が成り立つと考えます。初回ヒアリングでは設計の「幅」をもたせたヒアリングで信頼関係を築き、ファーストプラン提示後は良し悪しを感じる要素を聞いて抽出する。この方法を用いて間取りを作成すれば要望が変わっても対応でき、設計後のトラブルを回避できると考えます。1「気遣いのある設計」2「体験して楽しい表現」がお客様の心を掴む藤岡:私が考えるお客様の心をつかむ提案は、「気遣いのある設計」と「体験して楽しい表現」の掛け合わせです。「気遣いのある設計」に必要な3つの要素藤岡:気遣いのある設計とは、「セオリーは抑えておく」「流行要素も盛り込む」「生活を豊かにする+αのアイデア」の3つを入れることです。1.セオリーは抑えておく「設計する上で必ず抑えるべき定番の要素」です。たとえば、LDKは南側に広く配置し、水回りや倉庫系は北や西側に配置するなどが挙げられます。他にも、回遊動線や裏道線もセオリーに含まれますね。2.流行要素も盛り込むパントリー・ファミリークローク・シューズクローク・洗濯乾燥室などです。内容によってはセオリーでもありますが、これらも非常に重要な要素なので基本的におさえておくべきだと考えます。3.生活を豊かにする+αのアイデア基本要素をおさえたうえでさらに踏み込んだものです。顧客独自の要望を反映した具体的なアイデアや、それを魅力的に見せるテクニックです。実例:間取りをもとに、詳しく解説藤岡:こちらの間取りは実際に私がご提案したものであり、木造2階建て・全体面積約100平米程度の規模感。以下は、「セオリーの要素」としておさえている部分です。LDKは南側に配置し、採光を充分に取り込めている北側は、水回り・クローク・個室を固めてゾーニングを使い分けている洗面室は脱乾燥室としても使える洗面室にファミリークローゼットを隣接して家事動線を短くしている階段を中心にした回遊動線を設けている(行き止まりのない動線は使い勝手が良い)次にこちらのイラストをご覧ください。藤岡:+αのアイデアとは、「間取りを見ただけでは分かりづらい要素」を指します。たとえば、左のイラストは、玄関先の外観デザインです。玄関前に広めのポーチがあることで、日差しを避けられたり雨の日の支度がしやすかったりします。ちょっとした物も置けるので、「非常に便利なスペースですよ」というアイデアを提案しました。右のイラストは、畳スペースの活用イメージがしやすいよう提案したスケッチです。おもちゃで遊ぶならスペース下に収納を設ける、頭上のロフトスペースは遊び場や収納としても活用できるなどですね。私の場合、+αのアイデアは勝負を決めたいセカンドプランで提示すると非常に有効だと感じています。ファーストプランの段階では少しやりづらいかもしれません。その結果、顧客が満足する間取りを具体的に仕上げられます。手書き or CAD?お施主様の好みから「体験して楽しい表現」を選ぶ藤岡:気遣いのある設計やアイデアを表現するには、手書きかCADが一般的ですよね。手書きのメリットは、設計者の想いや人柄が伝わりやすいことです。顧客側から見ると、「私のために一生懸命書いてくれたんだ」と感じてもらいやすいかもしれません。しかし、壁を変えたい・部屋を追加したいなど、打ち合わせの時に出た要望をすぐにその場で変更しづらい側面があります。一方、CADは正確性が高い点が特徴であり、変更しやすい点がメリットです。藤岡:最近私は、打ち合わせでCADを使うことが多いです。その場でCADを触りながらすぐに要望に応える様は、ある意味パフォーマンスにもつながると思っていて。また、CADで整えて満足いただければ、間取り作成の時短につながります。藤岡:とはいえ、手書きとCADは両方に良さがあります。どちらを使うかは建築家の腕やお施主様の好み次第。そのため、使い分けて提案するのが重要です。下のイラストは、上の間取りを手書きで表現しています。手書きの方がCADよりも雰囲気があり、グッと引き込まれる感覚がありませんか?得意不得意や予算もあるかとは思いますが、気遣いのある提案と、体験して楽しい表現を掛け合わせることで顧客の心を掴む提案になると感じます。まとめ今回のセミナーでは、「選ばれる間取り」を生み出すための設計の考え方や、実務で活かせる提案のポイントについてご紹介しました。間取り提案では、図面の良し悪しだけでなく、暮らし方をイメージできる伝え方も重要です。設計者・営業担当それぞれの視点から、日々の提案に活かせるヒントを感じていただけたのではないでしょうか。