自宅とは、家族が最もくつろげる場所であり、食事や睡眠など生活の基盤をつくるために快適に過ごせるようにしたい場所です。そのためには間取りの設計が非常に重要であると、私たちは考えています。しかし同時に、快適な間取りの定義は人によってさまざまです。家族構成やライフスタイル次第で求められる間取りは変わってくると、日々さまざまな間取りを見て実感しています。少子高齢化社会が進み、共働きが当たり前と言われる現代の日本では、どのような間取りが求められているのでしょうか?今回は2023年に弊社のInstagramで最も反響が大きかった間取りを表彰する「間取りアワード2023」を振り返りながら、トレンドを振り返ってみたいと思います。まず初めに間取りアワード2023とは?2023年インスタグラムの投稿でいいね数の多かった間取りベスト5を間取りアワードとしています。間取りに関心の高いフォロワーさんに選ばれる間取りには、その年々の人気の傾向がうかがえます。対談者のご紹介まず初めに本日、対談をしてくださったお二人をご紹介したいと思います。マーケティング部の西垣と、ライター兼営業サポートの山田です。西垣 有真スタジオアンビルト株式会社マーケティング部。madree(マドリー)のインスタグラムを運用している中のひと。マーケティング全般を担当し、企画から実行まで担っている。30年間名古屋に住んだのち、関東支店で勤務。休みの日は東京観光に没頭している。山田 祥子スタジオアンビルト株式会社ライター兼営業サポート。全国規模のハウスメーカー営業職に勤務したのち、出産を機に退職。営業と子育ての経験を生かして、家づくりに役立ててもらえる記事を執筆中。休みの日は家族とキャンプ、ボルダリングに没頭している。「ウォークスルー裏動線」が3・4・5位を占めたワケとは?ーーー本日は「間取りアワード2023」を振り返ってみたいと思います。早速ですが、今年のアワード上位のうち3・4・5位を「ウォークスルー裏動線」が占めていましたね。社内でも随分話題になりましたし、業界の方にも是非知っていただきたいトピックです。2023年の間取りのトレンドのひとつに「ウォークスルー裏動線」があると思うのですが、おふたりの感想を聞かせていただけますか?西垣:Instagramを運用している中でも「ウォークスルー裏動線」の間取り投稿は良い反応をいただけることが多かったです。併せて「ウォークスルー裏動線」を確保するために、玄関からリビング、キッチンなど、至るところに収納をつけた間取りが人気だったように思います。来客の目には触れないところに収納がまとまりますし、家族が帰宅した際に玄関から歩きながら片付けられるので、一石二鳥ですよね。山田:2014年頃には、寝室や子ども部屋にはクローゼット、大きな荷物や季節ものの収納として納戸や小屋裏収納を設けるなど、家全体に収納スペースをちりばめていたんですよね。そこから最近はさらに変わり、廊下部分にも収納スペースを作るようになって、家全体における収納の面積割合が増えている印象です。西垣:確かに各居室にウォークスルーがついているイメージですよね。ーーー昔に比べて、今の世代のほうが”物”をたくさん持つようになったのでしょうか?山田:持っているモノの量は一緒だと思います。自分の子ども時代を振り返ると、家中にモノがいっぱいあふれていて、将来自分が家を建てる時には、これらをしまえるようにしたいなと考えていたような気がします。特に子どものアイテムは多いですよね。オムツやおもちゃとか、かさばるものも多いですし。あと今は共働きが当たり前になって、週一回の買い物で買いだめする人が増えていますよね。それらを収納しておける場所も確保する必要があるので、パントリーなんかを導入する家が増えている印象です。西垣:そう言えば洗濯洗剤も大容量タイプが増えていますよね。トータルで見ると、確かに現代のほうがモノが増えているのかもしれない。山田:楽天のスーパーセールやAmazonの定期買いで、まとめ買いする人もいますしね。西垣:あとはInstagramの影響で、おしゃれな家やスタイリッシュな生活感のない家が増えているので、それを真似するように収納を多くしている傾向もありますよね。いずれにしても、SNSで作られる今のお家のトレンドや、人々の生活習慣の影響が色濃く出るのが間取りですね。ーーー確かに今は部屋がスッキリと見える「見えない収納」が好まれているような気がしますね。それを叶えられる「ウォークスルーのある家」は、やっぱり間取りのトレンドなのでしょうか?数年前は少なかった印象なのですが、、、?山田:私は1年半前にスタジオアンビルトに入社したのですが、madree(マドリー)の間取りにウォークスルーが多いことに驚きました。転職前も住宅会社にいたのですが、お客様からウォークスルーを求められることはあまりなかったような気がします。西垣:「ウォークスルー」という単語は、数年前まではほとんど知られてなかったですね。業界の方は知っている方もいらっしゃったんですが、間取りに採用する施主さんは少なかったように思います。それも家事動線を意識する傾向が強まったことで、流行するようになりました。動線を良くしつつ、収納もできて(隠すこともできて)、家族みんなが綺麗に家を使える。それを目指す今の暮らし方が「ウォークスルー」を流行らせるきっかけになっているように思います。山田:小さい家だと、リビングなどの居室が狭くなってしまう欠点もありますけどね。でもInstagramの影響か、みなさん収納の中もとってもきれいにされている印象です。「ベランダが無いお家」「乾燥機を設置するお家」が増えている背景には、〇〇〇世帯の増加?ーーー今回、間取りアワード2023の1位を獲得したのは「花粉も天気も気にしない!サンルームと室内遊具のある家」でした。この間取りは、ベランダがないのが特徴ですね。ベランダがない間取りも最近のトレンドのひとつでしょうか?西垣:最近は花粉症の人が増えていて、洗濯物は外に干さず、部屋干ししたいという人が多いんです。あと共働き世帯が増えたことで、日中に外に洗濯を干せない方も増えたんです。そういった傾向もあって、ベランダは作らずに部屋干し用のランドリールームを作ったり、設備を充実させる方も多いですね。山田:やっぱり夜から外に干すのは気が引けますよね。最近は、ガス衣類乾燥機「乾太くん」を設置したり、ランドリールームを2帖や3帖分と広めに設けて、そこで洗濯物を畳む方が多いです。西垣:確かにそうですね。土地に余裕がある人は、ランドリールームとウッドデッキを直結させて、外干しもできる仕様にしていたりします。ーーーお話を聞いていると、時代によって間取りは大きく変わるんだな、と分かります。間取りを重視するのは女性が多い傾向にあると以前伺ったんですが、やはり女性の働き方や思考の変化も間取りに大きな影響を与えているのでしょうか?西垣:家事の動線は女性と言うよりも、家事担当の人が握っていますね。専業か共働きかによってもまた変わるような気がします。山田:確かに時代の流れによって人気の間取りは変わりますね。間取りひとつで暮らしやすかったり、暮らしにくかったりするので、間取りは社会のトレンドを写す鏡だと感じています。これまでの間取りトレンドも世の中の状況を写している傾向にーーーちなみに2023年より前はどのような間取りがトレンドでしたか?西垣:2021年の間取りアワードでは、信じられないくらい大きな平屋が1位だったんです。理由ははっきりとはわからないのですが、コロナ禍明けだったので、開放的な雰囲気が好まれたのかもしれません。平屋の人気が高い理由を調査したアンケートによると、「階段がいらない」が1位のようです。山田:平屋の物件では、「ワンフロア完結」というワードをよく見かけますね。確かに家事育児の目線で見ると、洗濯物や荷物を運んだり、幼い子どもを抱っこしたりして階段の昇り降りをするのって煩わしいんですよね。でも実際に建てる場合、平屋はそこまで多くない印象です。ーーーそれはなぜだと思いますか?併せて、平屋に変わる新しいトレンドは出てきていますか?山田:最近は延床面積が30坪を切った、いわゆる無駄を省いたコンパクトなお家を選ぶ方も増えています。建築業界でもウッドショックからの物価高が続いているなかで、ある程度の広い土地が必要で、建物も割高になってしまう平屋はコスト的にも採用しづらくなっているのかなと思います。建築エリアにもよりますが、代わりに小さな住宅が注目され始めています。西垣:土地や建物は小さくても、いかに豊かな生活を送るか。これは2024年のトレンドになるかもしれません。少し前に「8坪ハウス」が流行したと聞いたことがあるのですが、小さいことを活かしたプランも出てくるかも。画像引用元:建築家と出会う SuMiKa『8坪 ガレージハウス、隠れ家』関口太樹+知子建築設計事務所ーーー大きな家にこだわらない方も増えてきているのでしょうか。予算は潤沢でも、あえて小さな家を選ぶ方もいるんですか?山田:お金に余裕がある方は、住宅を購入するときに資産性を重視する傾向にありますね。住みづらくなったら住み替えることができるので、人生を家1棟で終えるつもりがないことが多いです。そういった意味で、お金に余裕がある方がコンパクトな住宅を建てるのは全然あり得ますね。西垣:都内では住宅購入費の8割が土地代ということも珍しくないですしね。ーーーなるほど。やはり間取りのトレンドから社会事情が見えてくるというのは本当のことですね。madreeデータバンクには今回ピックアップしたようなトレンドの間取りがたくさん掲載されていますが、どのような方に活用していただきたいと考えていますか?西垣:トレンドは変わるものですが、それでもやはり最新のトレンドをおさえた間取りは人気が高く、施主の方々を満たすことにつながっていくと感じています。弊社の工務店・住宅事業者向け営業支援ツールである「madreeデータバンク」は、トレンドをおさえた間取りも検索可能です。「トレンドがわからない」「流行を取り入れた、スタイリッシュな間取りを提案したい」とお考えの方は、ぜひご検討ください!