住宅営業による間取り提案の重要性は、多くの営業担当者が認識していることでしょう。とはいえ、間取り作成には多大な時間がかかり、お客さまのニーズに迅速に応えにくいのが現状です。本記事では、効率的な間取り提案の方法と、それによってもたらされる効果をmadreeデータバンクのマーケティング部 西垣に伺いました。「担当者が考える時間」から「担当者とお客さまが話し合う時間」へ。間取り提案の新しいアプローチは、従来の商談スタイルを変える可能性があります。住宅営業における間取り提案の重要性と課題ーーそもそも、住宅営業において間取り提案はどの程度重要なのでしょうか?なんとなく分かっているとはいえ、お客さまとの認識のずれがある営業担当者もいると思います。西垣:2022年の住団連の実態調査によると、「住宅購入で重視する点は?」という質問に対して、61.8%の方が「間取り」と回答しています。これは、耐震性や断熱性、気密性といった性能面よりも高い数字なんです。さらに、住宅購入者の86%が「3案以上の間取りプランを比較したい」との回答もあります。つまり、3案以上の間取り提案をしてくれる会社が選ばれやすいと判断できるため、成約率にも大きく影響すると考えます。ーーしかし、営業担当者にとって3案以上の間取りを作成するには非常に時間がかかる作業ですよね?西垣:そうですね。各社によって異なりますが、間取り作成1案あたり約4〜5時間はかかると思います。間取りの検討に2時間、作図に2.5時間という配分でしょうか。仮に1組3案の間取りを作成する場合、通常の勤務に加えて終業後などに間取りを作成するしかありません。土地のないお客様には、さらに時間がかかる可能性もあります。ーーそういった場合、自社でデータベース化した間取りを参考にしている場合もあるのではないでしょうか?西垣:一部では、住宅会社独自のデータベースを抱えている会社もあります。ただ、そのデータベースはトレンドに乏しいと聞きました。時間をかけて作成したとしてもトレンド感のないデータベースですと、お客さまのニーズにマッチしづらい場合もあります。結果、間取り提案で失敗するケースがあるのが課題だと感じます。例えば、在宅ワークに適応したスペースや回遊動線などはトレンドです。数年前のデータベースにはそのような間取りは含まれていないかもしれません。ーーなるほど。「お客さまのニーズを汲み取る」といっても、初回では把握しにくいこともあると思います。営業担当者にとって、どのような点が難しいと感じるのでしょうか?西垣:言葉だけでのやりとりでニーズを的確につかめきれない点ですね。互いに認識のずれが生じ、結果的にニーズを汲み取れていない間取りになると考えます。例えば、「ファミリークローゼットがほしいです」というお客さまからの要望があるとします。しかし、ファミリークローゼットは、形状・大きさ・配置場所など、ライフスタイルや土地の広さによって選択肢はさまざまです。単に「ファミリークローゼット希望」という言葉だけのやりとりでは、お客さまが具体的に「どこに」「どのような」「どの程度の広さ」のファミリークローゼットを望んでいるのか正確に把握するのは困難です。出会ったその場で間取り提案は、お客様の熱量を高めるのに効果的ーーそもそも、従来の間取り提案は効率的ではないのでしょうか?西垣:従来の提案では、間取りをすぐに見える形にしてお客さまへお見せすることはできません。初回ヒアリングから1〜2週間後、お客さまが再訪問した際に作成した間取りを提案するため、期間があいてしまうんです。仮にヒアリングでさまざまな要望を聞けたとしても、営業担当者側は作成に時間を要し、お客さま側は1〜2週間待たざるを得ない。現状の間取り提案は、「家を建てたい!」というお客さまの気持ちの熱を下げてしまうのが残念な点ですね。ーーもし、間取り1案あたりが1時間程度で作成できるようになれば、住宅会社にはどんなメリットがありますか?西垣:お客さまとのコミュニケーションをとる時間が増えるので、家づくりの熱量を高められます。時間に余裕が生まれるため、お客さまの要望をじっくりヒアリングできる。その上、効率的に間取りを提案できれば互いの認識をすり合わせることができ、お客さまが考える意図や暮らし方なども把握できます。お客さまからがっかりされることも減ると思います。“担当者が考える時間“から“担当者と話し合う時間“へーー間取りの作成には時間がかかる一方、お客さまの要望を汲み取るためのヒアリング時間も必要。どちらも大切なので、間取り提案には多大な時間を割かなければならない気がします。西垣さんは、どのような方法で効率的な間取りを提案するのが望ましいと考えますか?西垣:ヒアリングで要望を聞けた時点で、お客さまが求めている間取りに近い図面をいくつか提示する方法がよいと思います。「〇〇さんのご希望はこういった間取りですか?」と、その場で見せると理解いただけます。これにより、お客さまの反応を見ながら意見を汲み取れて、ニーズも調整しやすくなります。一方、お客さまも「AではなくBに近い感じです」と、頭の中にあるイメージを言葉に出しやすくなる。このようなやりとりが、より良い間取り提案につながると考えます。従来の提案方法はお客さま側からすると、「ひたすら要望を伝えて1〜2週間後まで提案を待つスタイル」です。しかし、この方法はお客さまも参加する「顧客参加型の提案スタイル」。一緒に間取りを考えて要望をすり合わせることで、スピード感や共感といった要素も加わり、家づくりの熱量を高められるのではないでしょうか。ーー初回のヒアリングで熱量を高められると、受注にもつながりそうですね!西垣:そうですね。初回ヒアリングで土台にしたデータをお渡しできればなおよいと思います。提案する側としては、「家族で話し合ってみてください」という流れが作れて再来店を促せます。一方、お客さまはデータを基に家族会議もできると思うんです。というのも、対面の場では、お客さまも気を遣って本音を言えないこともあるでしょう。一度持ち帰れば、必要のない設備や部屋などを家族で話し合える時間が持てます。特に二世帯の場合だと、祖父母の意見も大切です。目に見える形で共有できれば、ご家族の家づくり会議がスムーズに進むのではないでしょうか。ーー効率的な提案により、双方の時間を有効に使えますね。西垣:お客さまが求めている間取りに近い図面をいくつか提示する方法は、より深く顧客理解を進められ、お客さまの実現したい暮らしに初回からコミットできます。さらに、一緒に話し合う時間を増やせば信頼関係にもつながる。結果的に、成約率にも影響すると考えます。実例から学ぶ、効率的な間取り提案がもたらした効果ーーマドリーデータバンクには約4,000枚の間取りをお客さまと共有できたり、気に入った間取りを印刷できるサービスもありますよね。マドリーデータバンクを導入している住宅会社の具体的な活用事例を教えてください。西垣:例えば、プランに行き詰った時にデータバンクを検索して3〜4案ほど印刷し、お客さまの前に並べて参考にしているようです。マドリーデータバンクには弊社のインスタグラムで「2023年にいいね!を取った間取り」も収録されているので、話のネタやトレンドの共有に効果的だと聞きました。また、間取りを見せることで土地の有無や金額など、間取り以外の話を広げやすい面もあると聞いています。例えば、初回ヒアリングでは「土地はありません」という話でしたが、間取りを起点に話を進めると「実は、来年両親が持っている土地が空きそうで…」といった情報も引き出せたそうです。ーー初回ヒアリングで複数の間取りを見せるだけで、お客さまの具体的な好みや家づくりの背景まで把握できるのですね!西垣:初回でお客さまのニーズや好みなどの情報を効率的に得られるのは大きいですよね。その他、提示した間取りを使ってお客さまの連絡先を知る手段としても活用している会社さまもあります。データバンクの間取りを印刷するのではなく、データをLINEで送る。「本日共有した間取りをデータでも送れるので、LINEを教えてください」という流れです。【アイデザインホーム様インタビュー】madreeデータバンクの活用方法やメリットとは?ーーなるほど、そんな活用法もあるのですか!同じ間取りを共有していれば、次の商談ではより深い話し合いに進めそうですね。西垣:効率的に複数の間取りを提案して「話し合う時間」を設けることは、リアルタイムで間取りに反映できるためスピード感にも直結します。従来の間取り提案だと1〜2週間もお客さまをお待たせする一方、この方法を用いれば他社にはない強みになると考えます。効率的な間取り提案は、お客さまと一緒に考える時間を生み出せる初回ヒアリングでは、お客さまの要望を聞いた時点で求めている間取りに近い図面をいくつか提示する。この効率的な間取り提案は、単に時間を節約するだけでなく、お客さまとの関係性を大きく変える以下3点の可能性を秘めています。・お客さまと「一緒に考える」ことにより、より深い信頼関係を築ける・リアルタイムな提案により、お客さまのニーズに迅速かつ正確に応えられる・「一緒に考える」印象的な体験は、他社と差別化できる従来の担当者が1人で考える時間を長く取るのではなく、「お客さまと話し合う時間を設けること」「土台になる間取りをいくつか提案すること」からはじめてみてはいかがでしょうか。そうすることでスピード感と安心感につながり、信頼を得られる第一歩になります。