リフォーム産業新聞主催のウェブセミナー「99%のプロが知らない。リフォームの最適間取り提案術」。弊社取締役の山川とSCALE建築設計事務所代表の藤岡佑介氏が登壇し、間取りのトレンド・ヒアリング方法・提案方法を約280名の住宅業界の方々にご紹介しました。レポート第一弾「契約を勝ち取る間取りに共通する3つの要素」に続き、第二弾の本記事は、「失敗しない間取り提案につなげるヒアリング方法」をレポートします。新築やリフォーム問わず、住宅営業の初回のヒアリング方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてくださいね。藤岡氏とmadree(マドリー)(※)のヒアリング方法の全貌を惜しみなく解説いたします。※madree(マドリー):弊社が運営しているお施主様向けの間取り作成サービス登壇者紹介登壇者のお二人をご紹介します。藤岡 佑介/SCALE建築設計事務所代表1987年名古屋市生まれ。2011年〜2015年(株)シーラカンスアンドアソシエイツにて、小学校・学童保育所・住宅等の設計管理業務に従事。2015年〜2021年中日設計(株)にて設計管理に従事しクリニックの設計管理業務を担当。2021年に独立起業。山川 紋/スタジオアンビルト取締役1981年愛知県名古屋市生まれ。名古屋工業大学卒。 株式会社リクルートにてWEBマーケ、商品開発。2011年横浜市で建築設計事務所を設立、運営。 住宅設計、リノベーションのデザインを行う。2017年 スタジオアンビルト株式会社 取締役就任。間取りで競合に負けないために、ヒアリング方法を改善。山川:第一弾でご紹介した通り、お施主様が住宅購入で最も重視するのが間取りです。しかし、「間取りが原因で候補から外した会社があるか」の質問に対して3人に2人が「ある」と回答しており、その要因は「ヒアリング不足」であるというデータもあります。(弊社のinstagramアンケート調べ n=247)山川:これは、ヒアリング不足によりお施主様の要望が伝わってなかったり意見が反映されてなかったりという点が不満として挙げられます。その結果、間取りを提案しても結果的に受注に至らない。もしくは受注できても、間取りに対して潜在的な不満があって、設計完成後に変更や追加要望などのトラブルが生じるのだと思うんです。それを解消するためには、間取り提案前の「ヒアリング方法の改善」がポイントです。お施主様の気持ちに寄り添ったヒアリングにより、「要望が伝わっている!」「意見が反映されている!」と、満足度の高い間取りに仕上がりになると感じます。ーーー以下では、SCALE建築設計事務所代表の藤岡氏による対面でのヒアリング方法と、madreeのオンラインでのヒアリング方法を解説していきましょう。◯帖◯LDKといった条件を避け、設計の”幅”を広げるように藤岡:私が初回ヒアリングで重視していることは、設計の「幅」をもたせた聞き方をすることです。また予算、家族構成、車の台数など基本的な内容を聞くのはもちろんですが、雑談を通してお互いの人柄や信頼関係を築くことが重要だと考えています。企業によっては、「部屋の広さはどれぐらい欲しいか」「キッチンとダイニングは横並びがいいか」など、初回に聞く場合もあると思います。もちろん、最終的にこのような要望もお施主様に多々あるのは事実です。しかし、この段階では間取りや建物の規模感が定まっていないため、私は具体的な広さや要望は尋ねません。初回ヒアリングでは、形に直結する内容は一旦据え置いています。藤岡:そのあと私は、「ファーストプラン」と「セカンドプラン」の2段階に分けて間取りを提案しています。ファーストプランを提示して、出てきたお施主様の意見が非常に重要だと考えているんです。その意見や要素を反映させてセカンドプランとして落とし込み、質のいい間取りに仕上げる手法です。そのためには、ファーストプランは質<量。セカンドプランは量<質と考えています。ファーストプランでは、ヒアリングで聞いた大まかな情報を基に3〜5案の間取りを作成します。複数のバリエーションを提案する理由は、お施主様に要望を伺っても意見が出なかったり、現実離れした要望が出たりするからです。複数提示すれば間取りや要素に対して「イエス」か「ノー」で答えてもらえる。案が何もない状態では間取りは作れません。ですので、初回ヒアリングでは具体的な広さではなく雑談を重視しながらファーストプランで要素を提示しているんです。また、ファーストプランを提示した上でのヒアリングで重要なのは2点です。1点目は、「複数提示した案のどの部分がよくて、どの部分が好ましくないか」を聞くことです。ファーストプランでこれらの要素を抽出すれば、一層お施主様が満足する間取りを作れます。「どの案がいいですか?」ではなく「どの部分が気に入りましたか?」と聞けば、「個室は最低限でいい」「畳スペースは広めに欲しい」「広さが厳しいけど、書斎コーナーは必ず欲しい」など具体的な要望が出てくるはずです。2点目は、敷地の特徴・予算内でできる範囲・間取りを実現する上での問題意識をお客様と共有することが理想です。共有できれば、建物を買う立場と売る立場という関係性から一緒に建物を考えるチームワークが生まれ、お客様との信頼関係性を作れます。実際、リノベーションや限られた敷地内で間取りを落とし込む場合、意外に思い描いていた広さが取れないこともあります。これはお施主様にとって、理想と現実がリンクする瞬間。しかし、それを正直に伝えて問題意識をお客様と共有できれば、間取りの優先順位が成り立つと考えます。初回ヒアリングでは設計の「幅」をもたせたヒアリングで信頼関係を築き、ファーストプラン提示後は良し悪しを感じる要素を聞いて抽出する。この方法を用いて間取りを作成すれば要望が変わっても対応でき、設計後のトラブルを回避できると考えます。「暮らしかた」と「暮らしかたの未来」に焦点を当てたヒアリングを山川:madree(マドリー)は、Webのヒアリング1回でお客様の要望に近い間取りを作成しています。藤岡氏のような対面のコミュニケーションに近い密なヒアリングを目指しており、フォームの入力時間は20〜30分ほどです。madree(マドリー)がヒアリングで大切にしていることは次の3点です。暮らす人はどんな方なのか(=趣味やライフスタイル)どんな暮らしをしたいかLDK◯帖といった大きさは聞かない山川:そこで暮らす人と、その方々がどんな暮らしをしたいか、に重点を置いてヒアリングをします。次の資料は、実際にお客様が入力するmadree(マドリー)のフォームです。まず、暮らす方の家族構成・趣味・ライフスタイルを聞いています。お客様が「どんな方なのか」を把握しなければ間取りを作れないからです。ある程度人物像がイメージできる情報を聞くことで、お客様の暮らしに合わせた間取りが作成できます。例えば、「ご家族情報」と「家族のライフスタイル」に注目してみましょう。「ご家族情報」の生活時間帯の特徴には、週の半分以上が在宅勤務で、夜遅くまで勤務されている記載があります。この背景から、書斎やワークスペースなど集中できる環境を作る必要があると考えられます。一方、奥様は朝型で出社がメイン。朝の時間帯は忙しい奥様に対し、ご主人は寝る時間かもしれません。このように、暮らす方がどんな生活をしているかヒアリングし、想像しながら間取りを作ります。「家族のライフスタイル」の項目では、LDKや水回りに関わる部分を聞いています。食事のスタイルや家事の状況などが選択式になっており、チェックを入れた箇所が反映しています。例えば、上記の「食事」と「料理」から、朝食は奥様と娘様が簡単に食べていると想像します。この場合、キッチンの脇にカウンターを設けた間取りにすれば、朝の時間が今より楽になるかもしれませんね。次に、今の暮らしの不満をふまえた上で「どういう暮らしがしたいか」という要望を、選択式のフォームで聞いています。山川:madree(マドリー)が選択式でヒアリングしている理由は、「こんな暮らしがしたい!」と詳細に答えられるお客様は多くないと考えているからです。細かく選択式で聞けばお客様は答えやすく、こちらは間取りに繋がりそうな情報を抽出して作成しやすくなります。ここで注目してほしい点は、「具体的なLDKの広さを聞いていないこと」です。各部屋の要望・部屋の個数・ファミリークローゼットの有無などはヒアリングしますが、広さを聞くフォームは設けていません。具体的な広さを聞かない点は、藤岡さんと共通していますね。お客様の「暮らしの要望」を反映し、失注を防ぐ藤岡氏:初回ヒアリングで重要なのは、お客様のライフスタイルや暮らしの要望を聞きながら、信頼関係を築くことだと考えています。具体的な広さは聞かず設計に「幅」をもたせてヒアリングすれば、お客様が満足する間取りにつながると思いますね。山川:「◯坪で◯LDKの間取りを作ってください」と言われて間取りを作成するのと、ライフスタイルや暮らしの要望をヒアリングした上で作る間取りとでは、お客様の反応は違うと思います。詳細なヒアリングで仕上がった間取りなら、「この会社は自分たちの趣味や想いをしっかり聞いて、反映させてくれているな」と感じてもらえるのではないでしょうか。間取りにつながる選択項目を自社で熟考してヒアリングすれば、「ヒアリング不足」で失注するのを防げると思います。(第三弾は近日公開予定です!)