住宅営業において顧客のニーズをつかむことは、間取り提案の満足度に影響する要素です。お客さまの言葉から本当の要望を汲み取って的確な間取りを提案をするには、高い質問力が求められます。しかし、顧客理解を深めようとすると、どうしても時間がかかってしまうのも事実。「もっと素早く、でも的確に顧客ニーズを引き出したい」。そんな悩みを抱える営業担当者は多いのではないでしょうか。本記事は、「迅速な間取り提案を通じて質問力を高め、深い顧客理解を実現する方法」を弊社マーケティング部の西垣に聞きました。「質問力に自信がない」「顧客の本音を引き出したい」このような悩みがある方は必見。顧客との対話を変え、成約率を上げるヒントが見つかるかもしれません。ぜひ参考にしてください。顧客理解の重要性と従来の営業方法の課題点ーー住宅営業において顧客理解は必須だと思います。西垣さんの視点から、なぜ顧客理解が重要なのか教えてください。西垣:顧客理解が進まなければ、作成した間取りがお客さまに刺さりません。内装や外観はお客さまが理想のイメージを持ち込むため、それを形にするのは比較的簡単です。しかし、間取りの場合は違います。お客さま自身もまだ具体的なイメージができていないことが多いのです。だからこそ、この段階で顧客理解を深めることが重要になります。それがなければ暮らしに直結した間取りは作成しづらいと思います。ーー間取りは生活に直結する部分であり、建てた後に変えるのは容易ではないですよね。西垣:はい。弊社のInstagraアンケートで調べたのですが、「間取りが原因で候補から外した会社がありますか?」の質問に対し、3人に2人が「ある」と回答してます。「ある」と答えた要因には、「提案された間取りの満足度が低い」「ヒアリング不足」が挙げられているんです。つまり、顧客理解が浅い間取りを提案すると、失注につながる可能性が高いと考えます。ーーなるほど。なぜ顧客理解が浅くなってしまうのでしょうか?従来の営業方法も要因の一つですか?西垣:間取りの提案は口頭でやりとりしている会社もあり、お客さま自身もすべての要望を言語化しきれていないのだと思います。もし間取りを目で見える形で示せていれば、顧客理解は一層深まるのではないでしょうか。また、お客さまのニーズを反映させた間取りの提案に時間を要する営業方法にも課題があります。たとえば、ヒアリングで「帰宅後の動線を考えて、お風呂とキッチンは近くにしたい」という要望を聞けたとします。しかし現状では、それを反映させた間取りを作成するには1〜2週間必要なんです。その結果、お客さまにお見せするのにタイムラグが生じてしまい、家づくりへの熱量が下がっていたり、他社を検討したりする。1〜2週間後に間取りを提案しても、「お風呂とキッチンの位置はここじゃない…」と、不満が残って離脱するケースは多々あると思います。ーー従来の営業方法は、まるでキャッチボールの時間がかかりすぎているようなスタイルなんですね……。西垣:そうなんです。顧客理解を深めるには、短時間で具体的なやり取りが肝心です。たとえば、お客さまから出た要望をその場で描けるスキルがあればよいですね。間取りを視覚化することによりお客さまとのコミュニケーション量が増え、ニーズを間取りに落とし込めるからです。迅速かつ具体的な要望を反映させた提案が可能になります。ニーズの素早い視覚化は、顧客満足度を高める鍵ーーとはいえ、お客さまから出た要望をその場で描けるスキルがない人にとっては、迅速な間取り提案は難しい気がします。そのような人は、どうすればよいでしょうか?西垣:大事なのは、お客さまの要望をスピーディーに視覚化することです。描くのが難しければザックリとした仮の間取りをお見せして、その上から描くのでもよいでしょう。西垣:間取りを視覚化するメリットは、お客さまにとっては求めている家の要望を簡潔に言語化できること。一方、営業担当者は質問のキャッチボールを増やせてコミュニケーションの質を高められる利点があります。視覚化により双方のイメージを擦り合わすことができ、顧客理解が深まる。その結果、お客さまに刺さる間取りを仕上げられると考えます。ーーなるほど。視覚化できるものがあれば、短時間で顧客理解を深められるんですね。西垣:そうですね。互いのイメージをすり合わせられるので、「ヒアリング不足」という理由で離脱するお客さまは減るのではないでしょうか。やはり、言葉だけのやり取りには限界があると思いますね。顧客理解を深める「暮らし方」に着目した質問がポイントーー仮に、お客さまと共有できる間取り図があるとして、具体的にどのような質問をすればよいでしょうか?視覚化できるものがあっても質問力がなければ顧客理解は深まらないと思うんです。西垣:顧客理解を深めるには、お客さまの暮らし方や理想の暮らしに重きをおいて質問することです。例えば、「平日の朝、家族の起床時間は何時頃ですか」「夕食後どこで過ごしますか」「趣味は何ですか」「休日は主にどこで過ごしていますか」などの質問は効果的ですね。「リビングは何畳がいいか」といった広さに関する質問は、この時点で家の規模感がわからないため具体的に絞る必要はないと考えます。ーーなぜそのような質問が効果的なのですか?西垣:これらの情報から、家族の生活のリズムや空間の使い方が把握できるからです。仮に、リビングの過ごし方一つ取っても、家族全員でいつも一緒に過ごす家庭もあれば、それぞれが独立して過ごすことを好む家庭もありますよね。後者の場合、間取りにもそれぞれの居場所を設ける必要があるんです。暮らし方は各家庭によって違います。単にリビングの広さや部屋数を問うだけでは、浅い顧客理解になると思います。ーーお客さまによって暮らし方は違うため、顧客理解を深めるための質問の量も増えそうですね。西垣:そうですね。趣味やライフスタイルの質問を投げかけることで、営業担当者は質問のキャッチボールを増やせると思います。一方、お客さまはあらゆる角度から暮らし方を問われるため、ご自身が家に求めていることを次第に言語化しやすくなります。「自分たちのことをしっかり聞いてくれている」という満足感にもつながるのではないでしょうか。質問力アップにつながるmadreeデータバンクの活用法ーー従来の間取り提案ではリビングの広さや部屋数など、暮らし方に関する質問は少ないような気がします。実際に、madreeデータバンクを活用している住宅会社さまは、どのような質問をして効果を得ているのでしょうか?西垣:madreeデータバンクは建築士が作成した間取りを約4,000枚保持しており、お客さまと画面で共有できるツールです。さまざまなパターンが検索できるため、顧客の要望をすり合わせることができます。以下2例は活用シーンの一例です。例:キッチンスタイル西垣:キッチンのスタイルで悩んでいるお客さまには、アイランドキッチンと壁付けキッチンの両方の間取りをお見せします。お客さまは「アイランドキッチン」「壁付けキッチン」の言葉や仕様はある程度把握しているものの、双方のキッチンがある暮らし方まではイメージしきれていない場合があるからです。「どちらのキッチンが暮らし方のイメージに近いですか?」といった質問により、お客さまの意見を引き出しやすくなります。この時、間取りを見せながら「アイランドキッチンなら家族と一緒に料理を楽しめる一方で、物が置かれると目立ちやすいというデメリットもあります」と共有する。そうするとお客さまは判断しやすくなり、営業担当者はさらに踏み込んで理想の暮らし方を聞きやすくなります。このようなやりとりを本番の提案までに済ませなければ、「私たちの希望に合う間取りはできなかった」となりかねません。ーー確かに。「家族の顔を見ながら料理がしたい」と言われて1週間後に提案したら、 実際に図面を見て「アイランド型は汚れが目立つから、やっぱり壁付けがいいな」となるかもしれない。視覚化するものがあるからこそできる質問ですね。例:寝室西垣:寝室はどのご家庭も1つとは限りません。「お仕事は在宅のときもありますか?」「何時頃の帰宅が多いですか?」「眠りは浅いor深いですか?」といったライフスタイルに関しての質問は、寝室づくりにも効果的です。たとえば、「夫は夜勤の勤務がある仕事なので」という回答が得られたら、夫婦別々の就寝スペースを確保するなど、細かな配慮が必要です。その際に、データバンクからさまざまな別寝室パターンの間取りを検索します。検索した中から複数のパターンをお見せしながら、「物音を防ぐために1階に設けますか?」「一室の中に可動式の引き戸を設けますか?」など、さらに具体的な質問が可能になりますね。ーーこのような細かなニーズに応えられるのも、詳細な生活スタイルを聞き取れるからこそできることですね。質問力と視覚化をかけ合わせれば、顧客理解をもっと深められる住宅営業において、質問の量と質を高める手法は顧客理解を深めるのに必要不可欠なスキルです。ただし、言葉だけのやりとりだけでは限界があり、間取り作成に時間を要するでしょう。間取り提案の際は、まず1つでも「暮らし方」に関する質問を増やしてみてください。可能であればお客さまと共有できる間取り図を用意し、会話の中で活用してみましょう。そうすればお客さま自身が求めていることを言語化しやすくなります。一方、営業担当者も間取り作成の時間が短縮でき、お客さまと会話を重ねる時間をさらに得られます。コミュニケーションの量と質が高められるため、よりお客さまの心をつかむ間取りに仕上げられるでしょう。