住宅営業で勝負を分けるのは、間取り提案の質というデータがあります。初回提案でお施主さまの要望が叶えられていない間取りだと、失注するケースは少なくありません。実際、2022年の住団連の実態調査によると「住宅購入で重視する点」の第1位は「間取り」であり、61.8%を占めているデータもあります。お施主さまにとって、間取りは重要な要素なのです。(引用元:「2022年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」報告 一般社団法人住宅生産団体連合会(会長 芳井敬一大和ハウス工業株式会社 代表取締役社長))しかし、その重要性を理解していたとしても、なぜ間取り提案で失注してしまうのでしょうか?失注を防ぐためには何を改善すべきなのでしょうか?今回は、前職がハウスメーカーの営業職だった山田にその背景と間取り提案で勝つ秘訣を伺いました。【失注の原因①】顧客ニーズの理解不足&解釈ミスーーお施主さまにとって間取りが重要であることは重々承知しているのですが、実際に、間取り提案で失注するケースはよくあるのでしょうか?山田:間取り提案で負けることはありますね。「納得いく間取りはこの会社だとできなさそう」という理由でお施主さまに断られるケースは多々あります。やはり、ファーストプランからよい間取り提案ができないと、それだけで顧客を失ってしまう可能性は高いです。ーーそれは、シビアな世界ですね。素朴な疑問ですが、お施主さまは通常何社ほど比較検討しているのでしょうか?山田:平均すると3,4社くらいですね。多い方だと5〜6社を比較して、ファーストプランの段階で半分に絞ることもあるようです。というのも、例えば土日に打ち合わせる段取りだと1日1社か、午前と午後に分けて2社回ることになります。時間に余裕がある方なら1日2〜3社回れますが、お子さまがいる家庭や時間に限りがある方は、複数の会社を回るだけでも大変です。ーー休日は、ほぼつぶれてしまいますね……。山田:そうなんです。その背景もあって、「Web上で一括見積もりできます」というサービスを活用されている方も多いですね。ーーそのような状況の中お施主さまが来店されるなら、間取り提案で心を掴みたいものですが、実際は失注も多いと...。山田さんは何が要因だと思われますか?山田:主に「顧客ニーズの理解不足」と「要望の解釈ミス」だと考えます。お施主さまの言葉の裏にあるニーズを読み取れず、結果的に期待外れな間取りになってしまうのだと思います。例えば、「リビングを広くしたい」という要望に対して単に面積を大きくするだけの間取りを提案したとします。しかし「広くしたい」の裏側にある、「家族が集まりやすい空間」というお施主さまの本質を見逃してしまうケースもあると思うんです。結果的に、「そういうつもりじゃなかったんだよね」といったポイントが積もれば、お施主さまの心証は下がっていきますよね。ーー確かにそうですね!山田:もちろん、お施主さまの意図を理解していても社内ルールや設計ルールで実現しないこともあります。しかし、そうなると「担当者との意思疎通がうまくいかなかった」という印象になってしまい、家づくりを任せることに不安になる可能性がありますね。ーーそういった問題を避けるには、どのようなスキルが必要ですか?山田:個人的には、お施主さまに「伝えるスキル」と「想像する力」だと思います。先程お伝えしたように、力を入れている素材や営業スタイルの影響は当然あります。住宅に関しては周囲の環境や土地の条件による背景もあり、「あえてこの間取りにした」という設計士の意図もある。それらをお施主さまの要望と組み合わせて伝えるスキルが重要だと思うんです。たとえば、「収納がほしい」という要望に対して、「僕は1階にファミリークロークを設けるだけでいいと思う」と担当者は伝えたとします。その結果、お施主さまは「収納の大きさではなくて、収納の数が欲しいと言ったつもりなのに」と感じてしまうかもしれません。しかし、「「朝の準備をスムーズにしたい」といった要望を叶えるために、1階にはこの広さのファミリークロークを提案します」といった、お施主さまの希望をまじえる伝え方にする。そうすれば心証は下がらないと思うんです。ーーなるほど。お施主さまの言葉をそのまま受け取って間取りに反映させるのではなく、「なぜそうしたか」「どのような暮らしの要望を叶えているか」を想像して伝えるスキルが重要ということですね。山田:そうですね。実際、お施主さまはInstagramなどで情報収集して、家の理想を持って来店されます。これは、お施主さま自身も本質を言葉にするのは難しいからだと思うんです。だからこそ、いただいた言葉の中で「どういう使い方をすれば生活の質を向上させられるか」を想像する。その上で、お施主さまの理想の間取りと提案した間取りのギャップをうめるような伝え方が求められると考えます。【失注の原因②】担当者のスキルの格差ーー山田さんがおっしゃる「伝えるスキル」や「想像する力」は、営業担当者の経験値にも差があると感じます。経験の差は間取り提案の受注率にもつながると思うのですが、実際はいかがですか?山田:そうですね。新人の営業担当者は、お施主さまの要望を間取りに落とし込む力が不足しています。それに、見積もりの精度も低いと思います。例えば間取りの場合だと、「明るいリビングが欲しい」という要望に対して単に大きな窓を付けるだけでなく、光の入り方や家具の配置まで考慮した提案ができるかどうか、とか。ーーなるほど。それに至るまでのヒアリング力も必要ですね。ちなみに、見積もりも営業の仕事ですか?山田:基本的には営業が作成します。最初は社内の標準的な見積もり項目からスタートして、該当しない箇所を消したり、土地の条件や家の仕様に合わせて加えたりする方式です。例えば、地盤が弱ければ地盤改良の費用を追加したり、吹き抜けの要望があれば追加費用を計算したりします。そして提案時に、「この項目は標準仕様に含まれます」「これは追加オプションです」といった説明を丁寧にする。その内容と説明の質でもお施主さまから信頼を得られます。ただ、これがとても難しくて(苦笑)。新人にとっては特に大変な作業です。項目の見落としや、逆に不要な項目を入れてしまうこともあるんです。ーーさまざまなパターンが想像できます。確かに難しそうですね。山田:それに加えて個人的な見解だと、「レスポンス」は重要です。お施主さまから聞かれたことに対していかに早く、正確に答えるかは信頼関係にもつながります。遅れるにしても、「今確認中です」と一報を入れるだけで、お客様は「確認してくれているんだ」と安心してくれます。スキルが足りなくても、お施主さまを不安にさせないような真摯な姿勢は大切ですね。ーー新人の方は経験不足である一方、ベテランの方は提案力の深みが増して受注しやすいのでしょうか?山田:ベテランの営業担当者の課題は、トレンドへの対応不足ですね。トレンドの間取りは使い勝手がよいため、間取り提案でトレンドを添えれば世代を問わず喜ばれます。例えば、最近では「回遊動線」という考え方が人気ですよね。でも、昔ながらの「廊下で各部屋を繋ぐ」発想から抜け出せないベテランもいると思うんです。そうなると、50代のベテラン担当者が20代の若い夫婦に提案する際、価値観の違いでミスマッチが起きることも考えられます。最新のライフスタイルに合わせた提案ができるか否かもスキルの差です。間取りの提案で勝つには「想像力」「伝える力」「トレンドへのアンテナ」が鍵ーー間取り提案で受注率を上げるためには、どのようなスキルが必要でしょうか?山田:ヒアリング時は、お施主さまからいただいた言葉を「想像する力」が大切です。「なぜ」を繰り返し聞くことで、お施主さまの言葉の奥にあるニーズを掴めると思うんです。掴んだニーズを自社の強み・周囲の環境・土地の条件などを考慮した上で提案する。そこで重要なのが「伝えるスキル」です。お施主さまの理想の間取りと提案した間取りのギャップをうめるような伝え方をすれば、間取りに満足いただけて次のステップにつながると思います。ーー「家づくりは大変だ」という思いからワクワク感へと変わりますね!山田:そうですね!お施主さまには家づくりのワクワク感を体験してもらいたいです。そのためにファーストプランの段階で、madreeデータバンクはよいきっかけづくりになると考えています。トレンドの間取りも揃えているので、営業担当者のスキルに関係なく受注アップにお役立ていただけると嬉しいですね。